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「Dancer's plus」に、YTKのトレーナー大野裕二のブログ
「自然体の研究」が合併しました。

自然体検定 回答例


自然体についての検定問題の回答例です。

今後もさらに研究を重ねていきますので、この回答例も将来、必要に応じて改変を加えていきます。予めご了承くださいませ。


第1問

レジスタンス・トレーニングの原則として
「過負荷の原則」 「漸増性の原則」 「可逆性の原則」
があげられる。
スポーツにおけるトレーニングは、人間の適応能力を利用したものであるから、トレーニング効果を出していくためには、身体に対して常に新しい環境を与え続ける必要がある。
身体がまだ適応していない負荷を与え(過負荷)、身体が適応してくれば何らかの負荷を増して行く(漸増)繰り返しにより、筋肉量を増やす、血液の組成を変えるなど様々な適応変化を身体に起こさせることによって、トレーニングの効果を得続けられる。
また、身体は常に代謝しているものであるから、楽な環境にあれば必要のない機能は失われていく(可逆性)ことになるので、トレーニングによって得た機能を維持するためには、そこまでのトレーニングは続けなければならない。
人間の身体は、その適応能力によってトレーニングの効果を身につけていくが、トレーニングなどの負荷がかからない環境になれば、それに適応して衰えていくのである。


第2問

まずプレーの流れの中で、自分と相手選手、味方選手やゴールの位置は映像として、または感覚として頭の中になくてはならない。
ボールが飛んでくるときにシュートの体勢にあってもキーパーが前に立ちふさがったら、トラップしてコースを変える必要が生じるかもしれない。
シュートが打てる状態だとしても、枠の中に打つために必要な身体の部分を適切な技術で使わなくてはならない。
要するに、自分に向かってボールが飛んできたとき、そのボールに対して適切に自分の身体を反応させなくてはならない。
しかし、自分を取り巻くありとあらゆる情報を大脳で考えていたのでは動作が遅れ、シュートどころかボールに触ることもできなくなってしまう。
ボールのスピードや相手の位置など、いろいろな情報をいろいろな器官で感じて、練習によって身につけたように動くことによって、結果としてボレーシュートをすることもあれば、後ろの味方にスルーする場合もあり得る。
自分と自分を取り巻く状況を感じて、ボレーシュートをするかどうかの判断からボールに対する体の使い方の細かい調整まで一瞬にして身体を反応させる、それが反射である。 そうやって最良の反射を起こさせるためには、量、質ともに高いレベルの練習が必要である。


第3問

プロ野球のようにたくさんの試合をこなしながら、成績の積み重ねとしての「記録」を残すためには、常に安定した活躍を続ける必要がある。
練習をたくさんすると、技術が身につくと同時にその技術についての精度が向上し、安定して高度なパフォーマンスを行うことができるようになる。
好不調の波や、チームメイト、家族、グラウンド、道具など、あらゆる条件の変化にも動ずることなく安定していれば「記録」には到達することができる。
あっと驚くような活躍はなくても、積み重ねの記録は残る。

もともと体を動かすことに天才的な才能を持った選手というのは、練習をたくさんやらなくても優れたパフォーマンスを発揮できるので、意識の集中や試行錯誤の量に欠け、練習の質は低くなる傾向がある。
そのため、いろいろな条件に左右され、安定して優れた成績を残すことができないので、積み重ねの「記録」は伸び悩む。
しかし、調子がいいときには、みんなが驚くような爆発的な力を発揮できるので、そんな時の出来事がみんなの「記憶」に鮮明に残る。
おそらく、天才的な才能の持ち主も、さらに高次元の目標を持ち、それに向かって努力することができれば、記録にも記憶にも残るプレーヤーになることができるだろう。


第4問

スタートの合図で身体を前に移動させるには、脚で氷を後ろに蹴らなくてはならない。
この「蹴る」動作は重心の位置から見た脚の動きであって、足から見れば身体を前方斜め上に「持ち上げる」ということになる。
「持ち上げる」は、重力によって生じている体重を地面から遠ざけようとする動作で、身体を移動しようとしたときに重心の位置を保つ、または上げるために必ず必要な力である。
スタート前の姿勢で、両脚で立って体重が両脚にかかっているところから片脚を曲げれば、重心は曲げた側の脚の方へ向かって落ちようとする。その重力によって生じる慣性の力に、持ち上げる力をコントロールして加えることによって身体を移動させることができるのである。

また、氷を蹴る足が後方に滑ってしまっては、身体を前方に向かって運ぶことができない。
ブレードのエッジがしっかりと氷に食い込んでいなければ、「蹴る力」は「脚を伸ばす力」にはなるけれど「持ち上げる力」にならないのである。
脚に体重が乗って(重力がかかって)いれば、それがエッジを氷に押し付ける力になり、エッジが氷に食い込み、脚の力を身体全体に伝えることができ、力強い良いスタートができる。
地球上で行われるほとんどすべての運動が、重力を利用し、重力に反発することによって行われているのである。


第5問

ひとつ目
上半身が前傾しすぎていると、踏み切りと同時に上半身が伸び上がろうとするタイミングが遅れてしまい、踏切り脚が身体を持ち上げようとする力とタイミングがずれてしまう。
そこで、踏切り脚が伸びきるタイミングを少し遅らせて上半身と同調させることによって、強いジャンプをしようとする。

ふたつ目
振り上げる側の脚を強く振り上げすぎると、上半身をのけぞらせて後方への回転を生じさせてしまう。 そこで、首を前傾させることによって頭を前に移動させ、重心を前に持っていくことで、空中でのバランスを取ろうとする。

第6問

「腰を落とす」とき、通常、脚を少し開いて膝を曲げ、文字通り腰の位置を下げる。
これによって、身体を動かすときの作用点となる足の裏から身体の重心の位置に至るまでの筋肉及び神経に緊張を与え、あらゆる動きに瞬時に対応しようとする。
「引き上げる」とき、身体全体を地面から垂直方向へ伸ばすようにする。
これによって、身体全体の筋肉及び神経に緊張を与え、一番バランス良く立っていられる位置から重心がずれそうになったとき、すばやく察知し、すばやく修正できるようにする。

体重以上の力を腰にかけることはできないし、身体を上に引っ張る力など身体から生じるわけがないのだけれど、どちらも筋肉及び神経に緊張を与えるために行われているところが共通点。

相違点は、腰を落とす場合、主に外からの力に対して筋力をもって(もちろんすばやい神経の反射が必要)自分の体勢を維持しようとするのに対して、引き上げる場合、自分の身体の動きを察知して神経の反射によって(もちろん最低限の筋力は必要)自分の体勢を維持しようとすることである。


第7問

まず根本的な違いは、多くのロボットの場合、体幹部はほとんど動かないということ。バランスを取るのは四肢だけで行われているので、「曲がる」などのとき不自然に大きなアクションになってしまう。
人間の場合は、体幹部でもバランスを取ることができるので、足の動きに目立った変化を見せずにカーブすることができる。

人間が早く歩くまたは走る場合、体重の移動が先にあって、それを支えるために足を後から出していく。
ロボットは人間が真っ暗闇の中を歩くように、または割れそうな氷の上を歩くように、まず足を出して、その上にバランスを取りながら上体を乗せていくような進み方をする。


第8問

ボート競技は水に対して力を加えて行う運動なので、ほぼ等速性運動(アイソキネティクス)に近いことが最大の特徴である。

トレーニングでは、油圧式のマシンを使ったトレーニングが運動の特性に合っている。ただし、スピードと負荷の強さを同時に調整することは非常に難しいので、それだけに頼るのは効果の上で疑問である。
筋肉が発揮する最大筋力を高めることもスピードアップに有効なので、通常のウエイトトレーニングも効果的であるが、ある一定のアライメントでの最大筋力を強くするようなアイソメトリックや、可動域の狭いアイソトニックのトレーニングでは、効果は非常に限定的になってしまう。可動域を最大限に使い、セット毎に負荷とスピードを変えながら、最大筋力、持久力、スピードを意識して変化させる方法が適しているだろう。
オールを水につけて漕いでいる間、スピードは漸増するものと考えられるので、その動作の間、負荷も漸増していくとすると、ゴムを使ったトレーニングも実戦に即していると言える。ただし、短いゴムでは負荷が変化しすぎるのと、反動が危険なので、充分な長さのゴム(2~3m)を使用するべきである。


第9問

自転車の練習でも、初めは「前を見て」とか「ペダルを強く踏んで」などと言われ、そのような注意点を大脳から体中に指令を出しながら練習をする。
やがて、大脳で何も考えなくても体中の反射によって乗りこなせるようになる。
それがいわゆる身体が覚えたという状態であり、一生ものの技術になる。

スポーツの練習では、常に高度な技術を目指して練習をしているので、練習の場面では大脳を使って運動していることが非常に多く、多くの場合それが現役の間ずっと続く。
身体で覚えているものは少しくらい休んでも支障はないが、まだ“よくイメージトレーニングをしてからでないとできない”とか、“できるときとできないときがあり不安定である”などの場合、休むことによってまた1から練習しなくてはならないこともある。それは当然かなりの時間を要する
また、ギリギリの筋力でできているような技術も、筋力の低下によって失われてしまうので、その場合も筋力を戻すにはかなり時間を要するだろう。

逆にいうと、身体で覚えていることと、大脳で考えてやらなければならないことのレベル差が少ないほど、また筋力を必要としないものほど、元に戻る時間は少なくてすむということになる。
自転車の場合、一度乗れるようになれば、大脳で考えなくてはならないことが非常に少ないし、それほど強い筋力を必要としないので、いつでも乗れるのである。


第10問

瞑想して腹式呼吸をする? ストレッチをする? がんがんトレーニングをする? おいしいものを食べてゆっくり休む?

私の回答としては次のようなことをイメージしています。

理想とする自然体を球の中心において、今の自分がその中心からどの方向にどのくらいずれているかを知り、中心に近づくにはどうしたらよいかを考え、実践すること。

さあ、皆さんはどのようにお考えでしょうか?